私たち太陽ファルマ株式会社(以下、太陽ファルマ)は、太陽ホールディングス株式会社(以下、太陽ホールディングス)100%出資の医療・医薬品事業子会社として、社会貢献度の向上及び世界中に医薬品を届けたいというビジョンをもって2017年8月2日に設立されました。設立以降、「あらゆる技術」をもって、長期にわたって使用実績のある、社会的に重要な医薬品を安定的に患者様に届けることを第一の使命に掲げ、企業体制の確立に努めてまいりました。その結果、2017年11月に中外製薬株式会社及びF. Hoffmann-La Roche Ltdとの間で長期収載品13製品の製造販売承認譲渡について合意しました。これら販売する製品の承継に合わせて、医薬品の製造販売に従事する体制を整え、本格的に医薬品業界へ参入していくフェーズを迎えています。今後は、医薬品の製造販売業を行うものとして、事業活動の総合的信頼性を確保し、承継品のブランドを守り、患者様、医療に従事する方々に継続して製品と情報を提供してまいります。そして、太陽ホールディングスの掲げる「総合化学企業への躍進」の第一歩となるよう、医薬品業界での確固たる基盤構築と、国境や分野を超えた事業展開を目指して邁進していきます。
私たちの成長戦略として、まずは長期収載品の追加承継が重点項目として挙げられます。現在、当社は中外製薬株式会社及びF. Hoffmann-La Roche Ltdより13製品の長期収載品を承継しておりますが、追加承継により製品数を増やしていくことで、製薬企業としてより幅広いニーズへの対応と売上の拡大を目指してまいります。また、製品数だけでなく自社製造数も増やすべく、工場の取得及び建設にも優先的に投資を行っていく考えです。製造販売と並行して長期収載品の収益改善にも取り組み、利益率の更なる向上を図ります。また、製剤開発の技術力を高めていくために、研究開発施設の立ち上げにも注力してまいります。経営資源をこれらの重点項目に集中して投下するべく、当面、創薬は行わず、長期収載品の製剤開発及び製造販売に特化していく所存です。
国内において製造販売の体制を整え次第、グローバル展開にも着手いたします。太陽グループの海外展開で培った知見を活かし、海外へと進出してまいります。その足掛かりとして、太陽グループがネットワークに強みをもつ東アジアへの進出を計画しており、既に調査が進められております。グローバル展開の手法については、M&Aによる市場参入も含め、全ての可能性を視野に入れた上で、詳細な現地調査の結果をもとに策定していきます。グローバル市場において製薬企業としての地位を確立した後には、それまでに積み重ねた知見やノウハウを、医療技術や治療法といった分野にも展開することで、医薬品以外の医療業界へも進出していくことができればと考えております。
最終的には当社を含め、他領域のグループ各社とも連携を取りながら、「総合化学企業」としての太陽グループの一翼を担う存在を目指していきます。
佐藤:今から3年ほど前、太陽ホールディングスとして他業界への事業展開を考えていく中で、まずは医療・医薬品事業に参入しようと決めたのが、そもそもの太陽ファルマ設立の発端になります。医療・医薬品事業を選んだ理由は親和性の高さです。品質の高い日本の薬を世界中に届けることは、「化学メーカーとして高品質の製品を世界中に届ける」という、これまでグループが掲げてきた使命そのものではないかと考えました。事業領域としても化学と医薬品には近しいものがあることも後押しとなりました。
有馬:これまでのソルダーレジスト(SR)を中心とした電子機器用部材事業との親和性は確かにあります。一方で、勝手が異なる部分も多い。業界独自の法規制が多くあり、それらに適応するべく今も情報収集を続けています。規制以外にも、販売する製品をどう確保するのかという点も参入障壁となりましたが、有難い縁が重なる形で長期収載品を承継できることになり、なんとか会社として形にできたのが現在です。
川崎:製造販売業許可の取得も大きな壁でした。特に三役と呼ばれる総括製造販売責任者、品質保証責任者及び安全管理責任者の設置が法令で定められており、それぞれの責任者には決められた資格又は経験が必要です。総括製造販売責任者は私が担当することになりましたが、他の二役も経験のある方々がそれぞれの責任者になられ、社内外の力を借りながら当局の審査を経て、製薬企業としての船出に漕ぎ着けました。
山本:やはり業界参入に際しての課題は、医薬品業界の知見不足に集約されます。技術的な知見は当然のこと、業界におけるルールを理解しているかという点も取引を行う上では重要です。有馬からも話のあった規制に関して言えば、法律に基づいたものだけでなく自主規制も多く存在するため、そうしたルールの理解と対応は継続して尽力していきます。
佐藤:長期収載品の承継を一つの契機として、参入障壁はもう越えられたと考えています。今後の戦略としては、まず工場と研究施設の早期立ち上げに注力していきたい。工場に関しては、自社建設も買収もどちらもあり得ますが、何れにせよ最優先で進め、将来的には自社製品の製造も担う拠点としていく考えです。研究施設では当面、製剤開発に注力していきますが、長期的にいずれは創薬に結びつけることができればと考えています。
山本:製薬企業としての真ん中にあるのは薬づくりです。ここをまず柱として確立させたいと思っています。太陽グループはものづくりの会社です。今まで培ってきたものは存分に活かせる余地があります。ただ、それだけでは通用しないので、医薬品独自の厳しい基準を理解し対応していく必要があります。それも、工場全体に浸透させていかなければならない。太陽グループのDNAはしっかりと引き継ぎ、業界に対する知見を深めていく。その二つを上手く融合させながら、太陽ファルマとしての薬づくりを確立させていきたいです。
有馬:大きなテーマに掲げたいのは、グローバル展開です。医薬品業界への参入のきっかけにもなった、太陽ホールディングスとしての使命「高品質の製品を世界中へ」を全うするためにも、一刻も早く海外に医薬品を提供したいと考えています。海外進出の最大の壁は人の採用、教育、定着です。この領域に関する知見は、太陽グループの海外展開のノウハウがそのまま活かせるはずです。同業他社との差別化要因にもなり得るので、そうした意味でも海外展開を急いでいきたいと考えています。
佐藤:最初の進出先は、東アジアエリアを考えています。太陽グループの主力事業で築いたネットワークが最も活かせるエリアから進出していこうという考えです。既に現地には調査チームが入っており、あらゆる面から調査を進めています。詳細な調査結果をもとに方向性を策定していければと考えており、現段階では投資という形での進出も含めて、全ての可能性をフラットに考えています。
山本:縮小傾向にある国内の医薬品市場は、現状を打破するための、業界の旧習にとらわれない発想を求めています。他業界から参入してきた当社なら、これまでにはなかったような発想ができるはず。医薬品業界の新しい道を切り拓く企業を目指していきたいです。
有馬:患者様に優しい企業であり続けたいです。この想いは、スローガンの「あるべき薬にまじめな会社」にも込められています。今世の中に出ている薬は、すべて効果のある薬です。今ある薬を患者様が必要としている形で届け続ける。そんな、私の考える患者様への優しさを追求していきたいです。
川崎:薬という形以外でも医療に貢献できる企業を目指していきたいです。例えば医療技術や、治療法という分野へも進出できればと考えています。製薬企業として成長していく中で積み重ねた知見や技術を、枠組みにとらわれることなく活用していきたいと思っています。
佐藤:楽しい社会を実現したいです。海外には必要な薬が届かない地域があるから、海外に進出する。薬だけでは解決できない困りごとがあるから、医療にも進出していきたい。すべて、楽しい社会を実現するためです。将来、どんな分野に進出していくとしても、このビジョンは絶対に揺らぐことなく掲げ続けます。
佐藤 英志
太陽ファルマ株式会社
代表取締役会長
2001年台湾太陽油墨股份有限公司監察人。2008年太陽ホールディングス(株)取締役に就任。2009年執行役員、グループ最高財務責任者を経て、2011年代表取締役社長就任。2017年太陽ファルマ(株)代表取締役会長に就任、現在に至る。
有馬 聖夫
太陽ファルマ株式会社
代表取締役社長
2014年太陽インキ製造(株)営業本部長。2015年太陽ホールディングス(株)研究本部長を経て新規事業室長を務め、2017年太陽ファルマ(株)代表取締役社長に就任。
川崎 宗一郎
太陽ファルマ株式会社
取締役、信頼性保証部長
2016年太陽ホールディングス(株)入社。2017年太陽ファルマ(株)取締役に就任し、信頼性保証部長も兼務。
山本 修己
太陽ファルマ株式会社
取締役、品質保証部長
2016年太陽ホールディングス(株)入社。2017年太陽ファルマ(株)取締役に就任し、品質保証部長も兼務。
※掲載内容は2019年2月取材当時のものです。