エレクトロニクス事業

6G向け低損失材料

6G向け低損失材料

近年注目されている第6世代移動通信システム(6G)は、第5世代移動通信システム(5G)の高速・大容量、低遅延、同時多接続という特徴をさらに高め、次世代のインフラとして、通信サービスを劇的に進化させる可能性を持っています。6Gではミリ波~サブテラヘルツ帯といった高周波の利用が見込まれており、通信速度は5Gの10倍になります(下図)。

しかし、従来の低周波信号と比較して、高周波信号では伝送損失の影響を受けやすくなるため、伝送時の信号の遅延や損失を極限まで低減できる低損失材料が必要です(下図)。
当社は、これから本格化する6G市場に参入するため、新しい材料を創出したいという想いで開発に着手しました。現在、主流となっているフッ素系樹脂や炭化水素系樹脂、液晶ポリマーなどの材料が用いられる低損失材料は、一般的な基板材料の製造プロセスにおいて耐熱性や加工性に課題があると考えられ、当社では、新たに耐熱性や加工性に優れた低損失材料の開発をスタートいたしました。

当社は、様々な低損失材料の中でも、エンジニアリングプラスチックであるポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂に着目しました。PPE樹脂は、低誘電特性、高耐熱性、低吸水性を持ち、6Gのアプリケーションに適用できるポテンシャルが十分にある材料です。一般的なPPE樹脂は熱可塑性樹脂(下図(a))ですが、PPE樹脂の耐薬品性を向上させた熱硬化性のPPE樹脂が報告されています(下図(b))。
しかし、この熱硬化性PPE樹脂は、ハロゲン系溶剤など環境負荷の高い溶剤にしか溶解性を示さず、ハンドリング性に乏しいという課題がありました。

そこで、熱硬化性PPE樹脂に分岐部位を導入するという新たな手法により、従来のPPE樹脂の低誘電特性、高耐熱性、低吸水性を損うことなく、溶剤溶解性が劇的に向上することを見出しました(下図)。

この材料をメイン樹脂に使用した低損失材料を開発し、JPCA Show 2019に出展したところ、多くのお客様に関心をお寄せ頂きました。現在は、この可溶性PPE樹脂の量産化を進めるとともに、より一層の材料の改良に取り組んでおります。※ JPCA Show:国内最大級の電子回路総合展。

今後はグループが一体となり、さらなる材料の改良へスピーディーに取り組み、5Gが本格化する以前に、低損失材料の上市を目指していきます。
また、このような低損失材料の開発には評価技術の確立が不可欠であり、新たな材料の開発と併せて、評価デバイスの作成やシミュレーションにも取り組み、当社にしかできない材料を世の中に生み出していきたいと考えています。