エレクトロニクス事業

DX(デジタルトランスフォーメーション)

DX(デジタルトランスフォーメーション)

機械学習やシミュレーションは、近年のコンピュータの高性能化、アルゴリズムの発展、そしてその柔軟さ等を背景に幅広い分野へ活用されつつあります。いわゆる人工知能(AI)技術の中核の一つであり、今後ますますその能力と適用範囲を広げていくことが予想されます。
機械学習は、ある理論や数式を基に現象や特性を予測するシミュレーションと異なり、データ駆動型の技術です。従って、十分なデータさえあれば理論で追い切れないノウハウ、いわゆる「勘と経験」をも学習し取り込むことができます。
当社は、この機械学習をグループ内で活用することで、研究開発を加速することができると考えました。そこで、まだ化学業界では活用事例が少ない2017年2月より、化学、特に高分子材料の分野において、業務プロセスにおける機械学習の導入に向けての検討を開始いたしました。
同年、JSTイノベーションハブ構築支援事業「情報統合型物質・材料開発イニシアティブ 」に参画。知見を深めながら、社内において機械学習の導入に向けた研究テーマの立ち上げを新卒入社2年目の若手社員が行いました。
そして、化学構造をはじめとするいくつかのデータに対し、トライアル&エラーを重ねながら、機械学習のプログラミング・スキルを高め、新しい研究テーマとして動き出しました。

現在は、機械学習を活用したより効率的な製品開発体制の構築を目的とし、グループ会社と連携しながらソルダーレジスト組成物の様々な特性の予測や、顧客の要求特性を満たす組成そのものの予測を可能とする基盤の構築に取り組んでいます(下図)。

機械学習の活用事例の一つとして、ソルダーレジストの色合わせがあります。ソルダーレジストの製造工程において、狙った色を正確に再現できるかどうかは、製品の採用の可否に関わるほど重要な要素です。ソルダーレジストの色合わせは、加える色材のみならず、その他の原料や架橋反応プロセス、下地の影響など、様々な要因に左右されるため、ノウハウを知らなければ調整できないのが現状です。
そこで、この色合わせの工程において、ソルダーレジストの色調変化に関与する全ての構成成分を包含した特徴量データベースを構築し、ソルダーレジストの色のデータとともに機械学習を行いました。その結果、様々なチューニングを経て、一定の精度をもつモデルを構築しました(右図)。

実際に機械学習を用いた色合わせでは、製品中の色材量を調整する上で、予め色材量を変更した組成を仮想的に生成し、その色を予測させる試験を行い、その結果、左図に示している通り色変化を正確に再現できることが確認できました。これは製造現場で起こる事象を、機械学習でも同じように再現できたことを意味しています。
今後は、このような機械学習だけでなく、シミュレーション開発も予定しており、将来的には、シミュレーション結果と日々の製造現場から収集されるデータを学習させながら、継続的な事業成長への仕組み構築を目指しています。

材料開発の分野では、マテリアルズ・インフォマティクスと呼ばれるあらゆる材料に関するビッグデータとその解析により、材料開発を高速化させる研究が進んでいます。その中で、当社が取り組む機械学習やシミュレーション開発技術の習得や、その技術の材料開発分野への応用検討は、今後の当社の競争力を高めていく上では必要不可欠であると考えています。
さらに、新製品開発や新規事業に繋げることで、顧客ニーズへの迅速な対応とグループ全体の加速度的な成長へ貢献していきたいと考えています。