エレクトロニクス事業

半導体パッケージのレジスト

半導体パッケージのレジスト

近年、第5世代移動通信システム(5G)のような大容量高速通信やAI、自動車の先進運転支援システムなどの普及に伴いICパッケージの高集積化が求められている中で、当社はより一層高性能なソルダーレジストの開発に取り組んでいます。従来のプロセスでは銅配線表面に凹凸を設け、ソルダーレジストが隙間に入り込むアンカー効果を利用し高密着性を実現していました。しかし、次世代アプリケーション向けの高性能ICパッケージを製造するプロセス(以下、新プロセス)では、高周波への対応から銅配線表面の凹凸を少なくする必要があるため、平滑な銅表面においても高い密着性を実現するソルダーレジストが要求されます。平滑表面での高密着性実現は技術的に容易ではなく、特に、基板の耐性を測定するために長時間高温・高湿の条件下で行われるHAST試験の前後では、ソルダーレジストの密着力が大きく低下してしまうという問題があります。
下図に、従来プロセスと新プロセスでのHAST試験前後のピール強度を比較したグラフを示します。

※ピール強度:ソルダーレジストから銅箔を剥離するときに必要な力を測定し、密着性を定量化する試験。

当社は、これら課題に対して樹脂構造の検討とフィラー表面処理の検討を行いました。樹脂については、樹脂の加水分解がHAST試験後の密着性に影響を与えていると考え、非極性基である環状化合物の導入を検討しました。
しかし、単純な極性基の減量では、銅との相互作用低下による密着性の低下が懸念されました。そこで新たに複素環化合物を含む樹脂を原料メーカーと共に開発し、評価を行いました。その結果を右図に示します。
複素間環構造を持つ樹脂では、HAST試験後のピール強度低下が大きく抑制されていることが分かります。

次に、樹脂とフィラー間の界面制御に着目しました。一般的に異種材料の界面は強度が弱いために、フィラーの表面に有機処理を施し樹脂とフィラーの親和性を高めソルダーレジストの特性向上を図ることがありますが、今回はこのような従来の処理に加え新たな表面処理を検討いたしました。
その結果、有機処理と新規処理の両方を施した新規フィラーを用いることで、HAST試験後の密着性の低下を大幅に抑制する事に成功いたしました。

複素環化合物を有する樹脂と新規表面処理を施したフィラー。これらを適用したソルダーレジストは、HAST前に対して、HAST後も85%と高い密着性を維持できることが分かりました。そして、この新しく考案したソルダーレジストは、高性能ICパッケージの要求する低粗化表面への高密着性を実現することができました。