プロジェクト・ストーリー

NSプロジェクト

PROJECT STORY
NSプロジェクト

01

伸縮自在で柔らかく、しなやかな電子材料

これまで電子機器の材料は四角く固い部品が多く用いられていたが、NSプロジェクトの取り組みはこの常識を変えていくかも知れない。NSプロジェクトチームが開発に取り組むのは、柔らかく、しなやかな電子材料である。

もともと電子機器の多くは直線的で四角い部品で構成されることが多い。そうした背景から電子材料も直線的で四角いデザインが多くなっている。それに反して、NSプロジェクトが開発に取り組む材料は、柔らかく、伸縮自在。こうしたストレッチャブルな材料は、現在、次世代のデバイスとして大きな注目を集めており、ウェアラブル・デバイス等、人々が身に着けるような電子機器と非常に相性が良いのだという。近年、急速に発展し広がり続けるIoT(Internet of Things)において、ウェアラブル・デバイスは私たちの生活の身の周りだけでなく、医療産業等幅広い分野で人と情報を繋ぐ重要な役割を果たしていくと考えられている。人々が当たり前のように電子機器を装着する時代には、人体の曲面にフィットするような快適性がますます重要となり、伸縮自在な電子材料が求められるようになるのだという。

02

営業発信のプロジェクト

NSプロジェクトの始まりは、落合が取り組んでいた過去の試作品がきっかけであった。当時の試作品は実用化までには至らなかったというが、その試作品の持つ特性に大きな可能性を感じていた落合は、これを他の分野へ活かせるのではないかと考え続けていた。 「過去の試作品は実用化へは至りませんでしたが、その特性にはこれまでにない魅力を感じていました。そして、何か別の用途として新たな市場へ展開できる可能性を秘めた試作品であると考えていました」。そう語る落合は、以前ソルダーレジストの海外営業に従事していたプロジェクトリーダーである。NSプロジェクトはまさに営業発信のプロジェクトなのだという。

「過去の試作品を別のフィールドへと展開することで生まれたNSプロジェクトは、いわば製品のプロトタイプがすでに存在する状態からスタートしました。まずは、そのユニークな特性を異なる分野へ展開できないか、他にこの特性を必要とする市場があるのではないかと考え市場調査を行いました。市場を絞った上で、プロトタイプのサンプルを提供、顧客からのフィードバックを得て、さらに求められるニーズと合わせて特性を向上させていく。そうしたアプローチをタイミング良く、最小の人員で実行するためのプロジェクトです」と落合は語った。そして、実際にこれまでとは全く異なる市場領域での入念な市場調査を経て、模索の末に落合はある先端領域での市場の高まり掴んだという。
それがウェアラブル・デバイスなどの先端分野で期待されるストレッチャブルな電子材料であった。

03

最速でプロジェクト化を目指す

その独自の調査によりストレッチャブルな電子材料とその市場の将来性を確信した落合は、短期間でのプロジェクト化を目指し、常にサンプル片をポケットに忍ばせて、直接、経営層へ提案する機会を伺ったという。「すでに製品のプロトタイプが存在しており、既存設備でさらなる開発が可能でした。最短でのプロジェクト化を目指し、プロジェクト発足後も期限を決めて少人数でスピーディーに取り組める体制が良いと考えました」と落合は当時を振り返る。そして、経営層が出張に同行するタイミングで落合は自らのプロジェクト構想を伝え、その後、然るべき手段を経てボトムアップ型でプロジェクト化を実現させたという。「市場調査を行い、その裏付けも取れていました。だからこそ兼任ではなく、専任でこのテーマに集中して取り組める環境にこだわりました」。そう語る落合は、このプロジェクトをNSプロジェクトと命名したという。

プロジェクトの名前に込めた由来は、Next Stage。未来を切り拓く先進的な製品の実現を目指しながらも、共に取り組むプロジェクトメンバーにとっても大きな期待感を感じさせる名前にしたかったのだという。そして、そんな落合が最初に声を掛けたのが導電材料のスペシャリストである塩澤であった。NSプロジェクトにおいて導電材料は欠かせない領域であり、誘いを受けた塩澤にとってもこのプロジェクトに大きな魅力を感じたという。「絶縁材料のトップメーカーにいながら、私はこれまで一貫して導電材料の開発に従事してきました。このNSプロジェクトは、私が長い間、注力してきた領域でありながら、新たな可能性を感じさせる面白いプロジェクトであると感じました。そして、近い将来、製品化を経て当社が販売できるようになれば嬉しいと思い、プロジェクトへの参加を決めました」と塩澤は当時を振り返った。

04

新たなフィールドで試行錯誤を重ねる

こうして二人三脚で動き始めたプロジェクトであったが、二人にはある懸念もあったという。「本テーマは将来的に成長が見込める分野であり、早急に実用化したいと考えていました。しかし、実際には、製品が実用化されるまでの道のりは長くなるだろうと感じていました」。塩澤が語る通り、NSプロジェクトは太陽ホールディングスの主力事業であるエレクトロニクス分野に位置しながらも従来とは全く異なる市場領域での取り組みであり、顧客からの情報も少なかった。当初は顧客から求められるであろう特性を二人で仮説を立てながら開発・拡販の試行錯誤を重ねた。しかし、少数のプロジェクトチームだからこそ、こうした局面でもスムーズにプロジェクトを推し進めることができたという。「当初から目標の達成に期限を設け、少数体制で動いていたためお互いの役割はいつも明確でした。その分、互いの責任は大きくなりますが、スピード感があります。とにかく顧客からの声に耳を傾け続け、求められる製品特性へのハードルをクリアし続けました」と落合は当時を振り返る。

そして、次第に顧客との関係性にも変化が現れてきた。「私たちのプロジェクトが進み、製品のアイデアが具体化すると、試作品を用いた製品開発に取り組む顧客の方々の様子も熱気を帯び始めたと感じました」と落合は語る。

この変化について塩澤は「やはり私たちがスピード感を持って開発を進め、どこよりも先んじて顧客にスペックを認めていただくということが重要です。そうすることで、顧客の方々も当社の製品をベースに今後の製品開発を想定していただけるようになります」と技術者としての視点から語った。

こうした落合と塩澤の努力の積み重ねにより、NSプロジェクトが展開するストレッチャブルな電子材料は、当初から想定していた新たな市場において、次第に評価を獲得していった。

05

量産化の壁を超えて受け継がれる技術

プロジェクト発足から順調に品質への評価を確立してきたNSプロジェクトは、量産体制への移行を進めていったが新たな壁が立ちはだかった。「試作段階では問題ありませんでしたが、量産化技術を確立する上で製品特性のばらつきが発生し、それを克服する必要がありました」と塩澤は語る。量産化を想定していた設備で、量産時に特性が安定しないケースが発生し、二人の目の前には特性を安定化させるための仕事が山積みとなった。落合と塩澤はこうした事態を打開するために新たなプロジェクトメンバーの必要性を実感したという。「量産化は製品化への最終局面であり、この分野に新たなメンバーが必要でした」と落合が語った。そして、この量産化フェーズに抜擢されたのが山藤である。

山藤は、ストレッチャブルな電子材料に必要な樹脂合成技術を自身のフィールドとする研究者であり、山藤自身も研究からより製品化に近い開発に携わりたいという思いがあり、NSプロジェクトへの参画に魅力を感じたという。

そして、山藤を新たなメンバーとして迎え入れたNSプロジェクトは、量産化技術を確立するために、製造現場の技術者と共に山積する量産化への課題を克服していくことになる。「私たちのプロジェクトは、営業と開発のメンバーで構成されており製造系の技術者が存在しません。だからこそ、量産化技術を確立するためには製造現場の技術者の協力が欠かせませんでした」と落合は語る。そして、現場の製造技術者とプロジェクトメンバーの3名が一体になって、課題をどのように克服するのかを綿密に検討し続けた結果、既存の設備において見事に製造技術の確立を成し得たという。「とにかく特性にばらつきが生じるという課題に対して、様々な角度から考え続けました。そして、こうした評価をするのはどうかと、様々な改善策を見つけるためにできるかぎりの提案をしました」と山藤は振り返る。

06

5年後、10年後の未来が今ここで起きている

そして、製造部門を巻き込み、量産化技術が確立された現在では、NSプロジェクトのストレッチャブルな電子材料は信頼性の高い製品として、その地位を築き始めた。また、近しい製品特性が求められる新たな分野からも声が掛かるようになっているという。

最後にプロジェクトを振り返り、塩澤はこう語った。「山藤は、今回の量産化に大きく貢献してくれました。そして、今後はNSプロジェクトの今後を担う存在として彼に期待しています」。塩澤は、自らの技術を継承することで、山藤が今後のNSプロジェクトの未来を担う技術者になってくれることを期待している。そして、山藤もこれまでより顧客に近い立場で行う製品開発の魅力を感じているという。「開発者として、顧客の方々から製品へのフィードバックがすぐにいただけるため、やりがいを感じています。今では、また新たな課題やニーズが見えてきました。今後もこのテーマを深め続けていきたいと考えています」と抱負を語った。

また、プロジェクトリーダーである落合はこう締め括った。
「私たちが取り組んでいる新しい電子材料というのは、その多くが全く新しいデバイスに採用されていくものと考えています。それはまだユーザーが手にしたことのない未知の製品。その未知の製品がユーザーの手に届くまでには、きっと長い年月が必要です。ただ一方で、今まさに私たちは5年後10年後の未来を形作る一端を担っているとも考えられます。ストレッチャブルな電子材料のトップランナーとしてのポジションを確立し、この分野においてスタンダードな製品として評価をいただけるようになっていきたいですね」。