プロジェクト・ストーリー

再生医療プロジェクト

PROJECT STORY
再生医療プロジェクト

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「楽しい社会の実現」に向けて

「我がグループは絶えず技術革新に努め、新製品や新事業を創造することで、楽しい社会の実現に貢献できるグローバル企業を目指します」。太陽ホールディングスの経営基本方針にあるこの言葉通り、今、再生医療プロジェクトは新たな事業創造の実現を目指している。

再生医療とは、失われた人の細胞や組織、器官等を再生させ、その機能を回復させることができる先進医療だ。プロジェクト発足の中心的な役割を担った後藤は、当初を振り返った。「再生医療には特別な想いがありました。私自身、これまで数回の手術を経験し、一時期の歩行が困難な状況から医療の力で回復できたという実体験があります。こうした例は再生医療によるものではないですが、医療が進歩することの素晴らしさを自ら体験してきました。現在、取り組んでいる再生医療プロジェクトでは、当社が再生医療分野における医薬品製造受託機関(CMO)を担うことを目指しています。歩けなかった人が歩けるように、見えなかったものが見えるように、感じられなかったものが感じられるようになる。そうした人体の機能を劇的に回復させる可能性を秘めた再生医療分野の一端を、太陽ホールディングスが担えるかもしれません。だからこそ、このプロジェクトを何とか実現したいという想いが強かったのです」。

この再生医療プロジェクト発足には、もう一つ鍵となる出来事があった。それは、株式会社サイフューズとの出会いである。サイフューズ社は、細胞凝集と呼ばれる現象から得られる「スフェロイド(細胞塊)」から、細胞版の3Dプリンタ「バイオ3Dプリンタ」を用いて立体的な組織・臓器を作製する革新的なプラットフォーム技術を有した再生医療分野でのリーディングカンパニーである。後藤は同社の高い技術力を知り、そして何より「困っている方にこの技術を早く届けたい」という同社の熱意に共鳴した。その革新的なプラットフォーム技術を用いた細胞製品の製造受託を太陽ホールディングスが担っていくという未来を描き、再生医療プロジェクトを推進していくことになる。

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再生医療プロジェクトの行末を託された若きエース

後藤は、サイフューズ社との協力体制を進める一方で、プロジェクトの成功のために、より詳細な市場・技術調査が必要であると考えていた。そのためには、サイフューズ社の協力のもとで技術習得を担える新たなプロジェクトメンバーの必要性を感じていた。「再生医療分野への出資検討の段階で、すでに社内では一通りの調査が実施されていましたが、今後の事業化を見据えた上で、実際に製品を使っていただける現場へのヒアリングが圧倒的に不足していました。新規事業は、顧客を創るということでもあります。プロジェクトを推進する上で、顧客の顔が見えないことは懸念材料でした。そして、CMOとしての事業化を見据えたときのもう一つの課題は現場の製造技術に精通したオペレーターの育成でした」と後藤は語る。

この2つの大きなミッションにおいて、大きな役割を果たしていくことになったのが秋元であった。抜擢の理由について後藤は「秋元さんは、新しいチャレンジを楽しむ姿勢とそれに伴う優れた能力があります。秋元さんであれば、いずれ製造技術に関するオペレーターの責任者になれると感じました」と語る。

一方の秋元は、それまではエレクトロニクス事業で一貫してキャリアを積んできた研究者であり、医療分野は初めての経験であった。当初は、プロジェクトへの誘いに対して驚きもあったという。「具体的な内容はわかりませんでしたが、後藤さんのプロジェクトに対する真剣さと熱意に心が動かされました。何より新たな挑戦が始まりそうな雰囲気にとてもワクワクしましたね」と秋元は振り返る。

その後、秋元は再生医療についての調査を進めていく中で、再生医療の持つ大きな可能性と、その魅力に引き込まれていったという。 「再生医療の力で、今までは助からなかった人が助かるようになるかも知れない。太陽ホールディングスとして、その一端を担えるのであれば社会的にも意義があり、何としても実現したいと感じました」。

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再生医療のあらゆる可能性を追い求めて

しかし、再生医療プロジェクトにおける市場調査は、秋元がこれまでエレクトロニクス事業で経験してきたものとは考え方もアプローチの手法もまったく異なるものであったという。「これまでに製品の用途をある程度想定しながら市場調査を実施するという経験はしてきましたが、再生医療プロジェクトにおいては、太陽ホールディングスとしてCMO事業が実現し得るかどうかという非常に広範な調査となりました」と秋元は語る。

「当初はあらゆる情報を探し出し、事業検討において必要となるパズルのピースを増やす必要がありました」という後藤の言葉通り、秋元は医療マーケティングに関する企業、医療現場、周辺産業の企業から獣医師まで考えられる限り幅広い分野へのヒアリング調査を行うために奔走することになった。その中で、ときには競馬ファンに紛れて競走馬の見学会にも足を運んだこともあったという。「もともとフットワークは軽い方でしたが、より軽くなりましたね」と秋元は笑う。

そして、この経験を経て自らの成長も実感したという。「当初は未経験の分野に戸惑いもありましたが、ビジネスとしての可能性だけでなく、医師の方々が再生医療とその未来をどのように捉えているのかを直接知ることができ、とても貴重な経験になりました。そして、これまでエレクトロニクス事業を専門としていた私にとっては、医療という新たな領域の事業創出に関われたことで、知識の広がりを実感しました」。

その成長を横で見ていた後藤は「秋元さんは、本当に楽しそうにプロジェクトに取り組んでくれていました。当初は研究テーマについての話題が中心でしたが、次第に事業構想についても言及するようになり、彼女の視座が高まったことは、とても頼もしく、嬉しい変化でした」と語った。

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先端医療の現場で学ぶ日々

一方、秋元には市場調査以外にもう一つ重要なミッションがあった。 「それまでサイフューズ社の技術に関しては紙面上では把握していましたが、それだけでは真に技術を理解したとは言えませんでした」。そう語る通り、秋元はサイフューズ社のもとで1ヶ月間、実際に手を動かして細胞製品の作製に関する技術を学ぶ日々を過ごしたという。

サイフューズ社のバイオ3Dプリンタは、スフェロイドと呼ばれる団子状の細胞を一つ一つ剣山に差して積層し、立体的な構造体(細胞組織・臓器)を作製するまでの工程をオートメーションで実現する。しかし、その前工程の細胞を培養してスフェロイドを作製する工程では、極めて高い技能が求められるという。

「細胞は、少量では目に見えないほど非常に小さく、それを一つの構造体にしていくためには、まずは細胞培養を行い細胞の集合体 (スフェロイド)を作製する必要があります。この培養フェーズでは細胞に影響がでないよう非常に繊細な手の動きが求められます。こうした職人的な技能の追求は、これまで私がエレクトロニクス事業の研究で経験してきたものとはまったく異なる世界でした」と秋元は語る。

しかし、秋元は持ち前の器用さから見事にサイフューズ社からもその技術力を認められるまでに成長した。その評価を耳にした後藤も、再生医療プロジェクトの行末にさらなる手応えを感じたという。そして、秋元は現在も「細胞培養士」の資格取得を目指し学び続けているという。

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再生医療プロジェクトから再生医療事業へ

これまで後藤と秋元の二人三脚で推し進めてきた再生医療プロジェクトであったが、いよいよ事業化への道筋が見えてきた。しかし、プロジェクトから事業化への橋渡しを行うためには、医薬業界での経験が豊富な人が必要だと後藤は考えた。この、プロジェクトにかける想いをある人物に託すことになる。「再生医療において我々が目指すCMOでは、文字通り“人の体に入るもの”を製造するために極めて厳しい品質管理が求められます。具体的な道筋が見えてきた段階では、今後の事業化を見据え、これまで以上にプロジェクトを綿密に推進しながら率いていくことのできる人材が必要でした。そう考えると中垣ほどの適任者はいませんでした」と後藤が語る。その言葉通り、中垣は医薬のバックグラウンドを持ち、グループ会社である太陽ファルマ、そして太陽ホールディングス医薬品事業本部において医療・医薬品事業の推進に注力してきた人物である。

一方で、中垣にとってもこの再生医療プロジェクトには魅力を感じていたという。「当社グループの医療・医薬品事業は、医療用医薬品における製造(太陽ファルマテック)と販売(太陽ファルマ)の2つの機能を有し、双方が新たな価値を付加しながら、かつシナジーを結びグローバル展開を目指すという全体構想があります。私は入社当時よりこの全体構想に大きな魅力を感じており、特に新たな価値を付加していくための仕事がしたいと考えていました。そして、この再生医療プロジェクトに参画することは、私にとっても大きなチャンスであると捉えていました」。

また、再生医療プロジェクトの実現可能性についても中垣は「まずは設備投資が必要でしたが、それを補っても余りあるほど夢と社会的意義がある。やるべきだと感じました」と語り、プロジェクトの事業化に向けて社内で然るべきプロセスを経て、経営層から承認を得る準備に取り組んだという。

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ついに再生医療等製品の製造受託拠点が決まる

これまで再生医療プロジェクトの様々なミッションにおいて、後藤が最も頭を悩ませてきたのが製造受託拠点の構築であった。当初は、後藤自らが研究本部のある嵐山事業所(埼玉)に拠点を構築する予定であったが、様々な要因により実現することが難しく断念した過去があった。中垣は、この残された大きな課題に取り組んだ。

そこで、中垣が着目したのが太陽ファルマテック(大阪府高槻市)であった。太陽ファルマテックは、2019年に太陽ホールディングスが大手製薬会社から取得した医薬品の製造拠点である。太陽ファルマテックを取得することが決まった当時、中垣はそのポテンシャルに大きな期待を感じたという。「太陽ファルマテック高槻工場のあるべき姿は、付加価値の高い製品を作ること。太陽ファルマテックには、それを可能とする人材、歴史、拡張性、立地が備わっていました」。その言葉通り、太陽ファルマテックは、この再生医療事業においてもCMOとして十分に期待できる拠点であった。

そして、プロジェクトメンバーの3名と太陽ファルマテックの社員と共に、再生医療のCMO事業に必要となる立地、費用、人材などの様々な課題をどのように打開していくかを検討し、企画化したという。そして、経営層からの承認も得ていよいよ高槻工場が再生医療等製品の製造拠点として定められた。今後は、秋元がこの地においてさらなる重要な役割を果たしていくのだという。
「確かに一つの道筋を定めることができました。しかし、私たちのプロジェクトが終わるということではありません。今度は太陽ファルマテックと一緒になって再生医療事業の成功を目指し、共に現場を作っていく姿勢が必要です。そのために、これまで懸命に技術を学び深め続けてきてくれた秋元さんの存在もあります。彼女は、この地で製造部門を立ち上げていくリーダーとして大いに活躍してくれると期待しています」と中垣は語った。

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再生医療事業への期待

最後に、再生医療事業にかける期待について中垣はこう語った。「現在、再生医療等製品の製造を受託できる企業はまだまだ少ない状況です。そんな中で、私たちが再生医療におけるCMO事業を実現することは、ただ単に製造を受託するという一つの機能を担うという役割だけではなく、将来的な再生医療分野の成長、新薬や新医療機器など、従来では不可能だったことを可能にするような革新的な製品の誕生に直接的に貢献できるということだと考えています。是非、将来の再生医療の発展に欠かせない存在になっていきたいですね」。

プロジェクト発起人である後藤は「太陽ホールディングスとして、こうした新しい事業へのチャレンジを続けていくこと自体が、ステークホルダーの期待感を高めていくことに繋がるのではないかと考えています。それと同時に、当社で働いている社員自身が“太陽は常に変わり続けている”と実感することで、新たな挑戦への気運が生まれ、また一つ大きな成果へと結びついていくものだと思っています。当社は、学生の皆様に対しても、そのような期待感、ワクワク感を感じていただける存在であり続けたいと考えています。今後も新たなチャレンジを増やしていきたいと考えています」と締めくくった。