迅速に対応するための自社での体制づくり

近年、スマートフォンやタブレット端末、デジタルカメラなどの高機能化や軽薄短小化が急速に進み、お客様のニーズも変化しています。このニーズに応えるための製品として、ドライフィルム型ソルダーレジスト(ドライフィルムSR)の需要が増加しています。長年SRは液状タイプが主流でしたが、細かい回路パターン形成に対する特性や、お客様の製造工程削減が可能となることなど、今後も次世代スマートフォンなどへの採用が期待されています。しかしながら、当社ではドライフィルム加工をすべて外注委託してきたため、自社での一貫した生産体制は整備されていませんでした。そこで2013年、今後の顧客ニーズの急激な変化に柔軟に対応できるよう、自社で技術ノウハウを蓄積し、ドライフィルム加工の内製化、量産体制を確立することにしました。

経験則がなく、ゼロからの開発

まずは少量での自社生産体制を確立するために「パイロットライン」の構築に着手しました。そこで最も大きな壁となったのが「膜厚の精度」です。ドライフィルムSRの膜厚は10~50ミクロンで、その誤差はプラスマイナス1~2ミクロン以内に抑えなければなりません。人が機械に少し触れただけでも微妙なズレが生じてしまう環境の中、慎重に微調整を繰り返し、目標とする「膜厚の精度」を目指しました。

 

ドライフィルム加工をプールに例えると、25メートルのレーンに小さな木の葉が浮いている状態のようにフィルムにわずかな気泡が見つかるだけでも全てを廃棄しなければなりません。目標とする「膜厚の精度」を保つことでその気泡の発生を防ぐことが可能となりました。従来の予測を立てて行う実験とは異なり、経験則がないゼロからの挑戦は膨大な時間と作業量となりましたが、そのノウハウは量産工場のフィルム生産ライン早期立ち上げに大きく役立ちました。

お客様に安定した製品を提供するための体制を確立

2015年10月に北九州にドライフィルムの工場を竣工。新たな生産拠点として、北九州を選んだのには理由があります。その一つがBCP(事業継続計画)です。顧客が多い韓国や台湾、中国へのアクセスがよく、地震などが少ない低災害リスクエリアとして最適だと考えました。これで太陽インキ製造本社工場が有事の際にも製品の安定供給が可能となったのです。もう一つは「日本の技術力の復権」です。コスト面から考えれば、新工場は海外が適しているかもしれませんが、日本の技術力を世界に発信することにこだわり、北九州を選びました。ここから、海外メーカーには真似できない技術が世界に向けて発信されると自負しています。今後もBCPの確立と、技術力の向上に 日々努め、お客様のニーズに真摯に向き合い続けていきます。

秋山 学


太陽インキ製造株式会社 北九州事業所
技術グループ グループリーダー

 

液状のソルダーレジストの開発を携わった後、ドライフィルムプロジェクトに参加。他部署から集まったメンバーと共にパイロットラインの立ち上げに従事する。2015年9月からは北九州事業所技術グループ、グループリーダーとして事業を推進。

※掲載内容は2015年12月取材当時のものです。