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Project
Story01
プロジェクトストーリー01
技術の幅を広げ、
新たな柱をつくる
デジタル技術が発展し続ける中、その発展をリードするために何ができるのか。太陽ホールディングスはその取り組みの1つとして、電気信号の遅延や損失を低減できる電子材料を目指し、樹脂材料の研究開発に取り組んでいます。

S.S.
研究
太陽ホールディングス
研究部
2016年入社。2020年から本プロジェクトを担当。新材料のさらなる進化を目指して研究を進めている新素材チームのリーダー。
M.N.
開発
太陽インキ製造
開発部
2007年入社。研究部に配属後、2度の育児休業を経て2019年に人事部へ。2023年10月に開発へ異動。自身で生み出した材料の製品化に取り組んでいる。
K.O.
開発
太陽インキ製造
基盤技術開発部
2019年入社。研究部で新材料の量産化を担当。製造委託会社との連携、新規樹脂設計を担った。その後、テーマの事業移管に伴い開発部に異動し、製品展開に向けて活動中。
Session01
目指したのは、
高速通信社会を支える新材料

M.N.
近年注目されている第6世代移動通信システム(6G)は高速・大容量、低遅延、同時多接続という特徴をさらに高め、次世代のインフラとして、通信サービスを劇的に進化させる可能性を持っています。テーマ立ち上げ当時は4Gから5G、そして次世代の6Gへと高速通信化が進む中で、従来の低周波信号と比較して伝送損失(基板における信号の減衰)の影響を受けやすくなることが課題でした。信号伝送時の遅延や損失を極限まで低減できる低損失材料へのニーズが高まっており、材料メーカーがこぞって研究開発していました。その中で太陽グループが社会に価値提供していくためには、得意とする複数種類の樹脂や無機物をフォーミュレーションする技術に加えて、カギとなる樹脂を自社オリジナルで開発することが必要であると考えました。そこでまずは、低損失樹脂の設計と合成からスタートしました。このようにして社会の要請に応えることができれば、太陽ホールディングスのビジネスの可能性が広がっていくと思ったのです。
S.S.
高速通信へのニーズは高まり続けていますよね。エレクトロニクスの分野において「いかに伝送損失の低い材料をつくれるか」は、これからも続く大きなテーマ。世の中にいくつもの低損失材料がある中で、どんな材料の開発を目指したのですか?
M.N.
世の中にある材料を調査したところ、当時主流となっていた低損失材料は環境負荷が高いハロゲン系の溶剤にしか溶けないものが多く、300℃以上の高温でないと成型加工ができない、そして多大な製造コストがかかるといった課題があることが分かりました。これら3つの課題を同時にクリアする材料をつくることができれば、きっと市場にインパクトを与え、顧客に受け入れてもらえるはずだと考えました。
Session02
突破口のヒントは
ラボの外にある

M.N.
とはいえ、「これまでにない低損失材料をつくる」というコンセプトを達成するための研究シナリオを考えることも、容易ではありませんでした。マーケット調査や特許調査、論文調査に加え、技術コンサルをお願いしている大学教授にアドバイスをもらうなど、社外からも積極的にヒントを得ていました。研究本部長や課長から何度もフィードバックをもらい改善を繰り返し、求める樹脂が合成できるよう実験も並行して行っていました。組織全体でこの挑戦に取り組んだからこそ、実現可能な研究シナリオに到達できたのです。
K.O.
私は、プロジェクトに参画した当初、M.N.さんが「この市場には、こういう課題があり、こういう競合がいるから、こういう製品をつくりたい」という研究シナリオを語っていたのが印象的です。「今、何が求められているのか・どんなものをつくったら市場を変えられるのか」を考えることが大切なのだと刺激を受けたのを覚えています。
S.S.
研究職だからといってラボで想定される課題の仮説検証をするだけでなく、どんどん外部に出ていってもいいのだとM.N.さんの姿から学びました。
M.N.
いろいろな方々の知見を得たおかげで、合成は順調に進んでいきました。そんな中で人事異動に伴い、S.S.さんやK.O.さんにバトンタッチしました。
Session03
「安定的な量産」という課題を
乗り越えるチームワーク

K.O.
引き継いだ後の課題は、安定して量産できるようにすること。樹脂材料の性能が評価されるようになり、もっと量が欲しいというフェーズに入っていきました。この材料は、空気を吹き込みながら合成するなど、条件がかなり複雑なので、工場での量産化は失敗が多かったです。フラスコレベルのサイズに立ち返ったり、試験装置を組み立て直したりして、試行錯誤を繰り返しながらスケールアップを図りました。
S.S.
製品にするには、いつも同じ品質のものを安定して大量につくることができる必要があります。そのために、チームで議論しながら最適な条件を見極め、分量や手順の標準化を進めていきました。
K.O.
この量産化のフェーズでは、開発部と協業して進めることに。顧客にご提案する上での開発部のオーダーをS.S.さんが取りまとめてくれ、一緒に要求をクリアする製品を開発していきました。
S.S.
研究部と開発部で協力して顧客に提案するためのサンプル品をつくることもありました。部署の垣根を越えて、チームで議論しながら少しずつ研究を前に進めることができたと思います。
K.O.
自分で手を動かしながらサンプル品をつくったこともよかったです。何が問題で、どこに原因があるのかが見えてくるようになりましたから。おかげでその後の研究自体もスムーズに進みました。
M.N.
しばらく人事部で働いていたのですが、2人が取り組むプロジェクトの話はよく耳に入ってきていました。2021年にはとあるアワードを受賞したと知って、とても嬉しかったですね。
Session04
世の中を変える材料を
つくるために必要なこと

M.N.
2023年10月から、またこのプロジェクトに戻ってきました。私が研究を始めた当初は片手サイズのフラスコで生成される微量な粉末でしかなかったものが、今や巨大な釜での生産ができるようになっている。本当に感激しました。
S.S.
種を蒔いていくような研究活動も大切ですが、今回は芽を伸ばしていくフェーズまで携わりました。この間、特に学びになったのは、コストや性能など顧客の声をもとに改善すること。独自の技術と新たなアイデアに加え、市場のニーズを取り入れる。この経験ができたことは、研究職のキャリアを築く上で大きな財産になりました。
K.O.
ただ「新しい」「スペックが高い」だけでは、世の中は変えられません。ここまで来られたのは、どうしたら世の中に必要とされるか、試行錯誤したからこそ。研究、開発の部門を越えて進行した今回のプロジェクトが、社内で新製品を生み出すモデルケースになればと考えています。
S.S.
このプロジェクトを機に、ソルダーレジストに限らず世の中の様々な課題を解決する材料を提供できる存在へと太陽ホールディングスを進化させていきたいです。
M.N.
太陽ホールディングスは複数種類の原料を配合する技術に強みがありましたが、これからは原料そのものからつくっていく。私たちが挑戦しているのは、新たな樹脂を1から生み出し、合成し、製品に適用するという当社の前例にないことでした。太陽ホールディングスが変革していくきっかけになれたら嬉しいです。

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プロジェクトストーリー02
太陽ホールディングスの研究職は、誰かからテーマを与えられるのではなく、自分でテーマを見つけていくこともあります。どんな課題に着目してプロジェクトが始まったのですか?